Keep paddling project第15章

World SUP Festival/APPワールドツアー開幕!!

Profile

荒木珠里(あらきしゅり)teamKANAKA所属
2006年5月7日沖縄生まれ、16歳。NHK高等学園 2年生

 

幼少の頃から沖縄の大自然に囲まれて育つ。漁師の祖父の影響で物心がつく前から海に飛び込み、アスリートの父の影響でSUPを始めた時期は記憶に無いほど、”海”は彼にとって欠かせないフィールド。将来はモロカイ世界チャンピオン、オリンピックで金メダルという夢を描きながら父の背中を追いかける。趣味は読書。得意な科目は図工と体育。小中一貫校、緑風学園時代には持久走大会では1年生から最終学年まで9連覇、小中最大の目標を達成し読書数は2000冊を越えた。今春から高校進学しプロの道を歩き始める。Shuri grew up surrounded by the great nature of Okinawa. He jumped into the ocean before he could remember because of his fisherman grandfather, and the time when he started SUP under the influence of his athlete father is an indispensable field for him. His future is Molokai World Champion, chasing his father's back as he paints his dream of a gold medal at the Olympics. His hobby is reading. His favorite subjects are arts and crafts and physical education. During his time at Ryokufu Gakuen, an integrated elementary and junior high school, he won nine straight victories in endurance races from the first year to the final year, achieving the biggest goal in elementary and middle school, and the number of books he had read exceeded 2,000. He started high school and professional career in this spring.

 

 



荒木珠里メルマガvol.51 「WSF / ワールドツアー開幕」 (2023年5月10日)から引用 

みなさん、こんにちは。荒木珠里です。今年最初のスペインでの「World Sup Festival」世界大会が終わりました。世界30ヶ国、300人以上が集まる世界最大のSUPレースイベントに昨年の12月に続き僕とお父さんと妹の3人でスペインへ出発。僕は16歳最後のレース、そしてなんと3人ともそれぞれレースに出場しました。土曜日はディスタンス、日曜日はスプリントが行われ、僕とカナカはいつも通りどちらのレースにも出場し、今回出場を予定していなかったお父さんも当日オープンクラスにエントリーできるということで、土曜のディスタンスだけボードをかりて出場しました。そして結果は、僕はディスタンスでは2位、スプリントでは3位、カナカはU10の部門で見事、両種目でダントツ優勝(かなかのあまりのレベルの高さに見ていた人達がみんな驚いていました)、お父さんもオープン部門で10-20代の若い選手たちをみんな抑えて優勝しました。かなかは昨年の12月のスペインの大会が初めてのSUPレース経験で、とても楽しかったらしく今回も出たいということで2度目の出場になりました。お父さんは僕がワールドツアーに出るようになって、ずっと海外遠征のサポートに徹してくれていました。海外の選手たちはお父さんがどれだけ速いのか知らなかったので、お父さんがオープン部門で優勝したことにとても驚いていました。

さて、僕のレースの報告をします。ディスタンスは、大陸から7kmほど離れた島をスタートしその島を1周してビーチまで戻ってくるという、僕が得意とする100%海のレースでした。昨年は他の選手から離れた進路を取ってしまって5位という結果で終わってしまいました。なので今年はその結果を上回ると同時に優勝を目指してレースに挑みました。今回は長距離レースの世界王者、マイケル・ブースはアメリカのレースに出場してスペインには来ませんでした。僕の4つ上のライバルで昔からの友達、ノイック・ガリューが1番のライバルでした。ノイックはフランス領のニューカレドニアという沖縄と似たような島に住んでいるので僕と同じで海のレースが得意な選手です。なので優勝するためにはノイックを超える必要がありました。去年のISA世界選手権ではたまたま僕が優勝しましたが、実力の総合力ではノイックが世界で最もハイレベルだということは間違いありません。マイケル以外の世界トップ選手はほぼ全員集まっていたので今年のディスタンスは昨年よりさらにハイレベルなレースとなりました。コースは島を周って陸のゴールに向かう時に追い風追い波、ダウンウィンドになるコンディションで有名ですが、今年はなんと当日だけ横風になってしまい、右漕ぎがメインで左側を中々漕げないきつくて難しいレースになりました。あまりの厳しさに本来のコースとは少し変更になり、3キロほど短縮されたコースになりました。

サップにとって横風は風下側の片方で漕がないと真っ直ぐ進まないので、どうしても体の片方の部分に負担がかかってしまいます。その負担をすこしでも減らすために、ゴールまで真っ直ぐ行くのではなく、風上側の方へ少し大回りするような感じで進路をとる(横風の場合、最初風上側へ少し上っておくと後で風に押されながら行けるようになるので楽に漕げるようになります)、という様な作戦や、去年の失敗を活かして周りの選手も見ながら進んでいく、ということも考えながらレースに挑みました。

レーススタート、最初のスタートダッシュはいつもやってきた練習のおかげで先頭集団に出ることが出来ました。それから島を周るまでの間、小さい頃から沖縄の荒波で鍛えてきた技術を駆使してグチャグチャな波の中を抜けて、先頭に出ることが出来ました。それから島を周り2位に約50メートルまで差をつけ、そのままゴールまで始終左から横風を受ける形のコンディションが続きました。1位のまま順調にはいかず、ノイックも波に上手く乗りながらだんだんと僕に近づいてきました。ノイックは、波風の技術にプラスα、パワーもものすごく持っています。油断は出来ません。なのでしっかりノイックを目に入れておきながらあまり離れすぎず、少し風に対して上り気味で進んでいきました。しかし今回もひとつそこで反省点ができました。横から受ける風を気にしすぎて少し大きくコースを回りすぎてしまったことです。しかもレース中盤、朝から強く吹いていた風が一気に落ちてしまい、僕が必死に風上にのぼって位置をキープしていたメリットが少なくなってしまい、僕よりも風下に位置付けていたノイック達が風上に上る体力を僕ほど使わなくてもゴールへ真っ直ぐに向かえるコンディションに変わってしまいました。そしてゴール手前約2kmのところでノイックに並ばれ、そこからは僕とノイックの一騎打ちになりました。だけどそこで僕とノイックの経験の差が出てしまいました。このレースには、自然にできるうねりの他に一般の人達が乗っているフェリーや大会関係者たちのボートのうねりも沢山あります。ノイックはそのボートのうねりが来るタイミングなども読みながらコースを選んでいました。なのでボートのうねりに上手く乗っているノイックとそれがまだ分からずに漕いでしまっている僕とで、差が開いていってしまい、ゴール手前約1.5kmのところでノイックに先を行かれてしまいました。最後まで何があるか分からないので諦めずにノイックについて行きましたが追いつけず、惜しくも準優勝でのゴールになってしまいました。今年も昨年に続きオーシャンレースのナビゲーションの難しさを痛感し、まだまだ経験と視野の広さが足りないことも知ることが出来ました。優勝も逃してしまいましたが、また新たに経験を積むことが出来たので、この悔しさを忘れずに来年もリベンジしたいです。

そしてスプリントレース。今までスプリントレースでは海外の選手達に比べ圧倒的に体格で劣る自分には不利な種目で、悔しい思いをたくさんしてきました。その度に沖縄へ帰ってからお父さんと一緒にどうすれば体の小さい自分でも海外の選手達に勝つことが出来るか、試行錯誤しながら研究してきました。そしてその練習の成果を今回のレースでしっかり出すことができました。

前日のディスタンスレースを終えて、翌日のスプリントレースに向けてなるべく疲労の回復に努めましたが、それでも今回のスプリントレースも過酷な5レースでした。

本当は4レースで終える予定でしたが、最初の予選で失敗してしまいました。スタートから先頭で1位に出ることが出来ましたが、そこで守りに入ってしまい、体力を溜めておく事を考え少し手を抜いてしまったところ2位の人にさされて、予選落ちしてしまいました。

それから敗者復活戦、実力者が揃ってギリギリだと思われるレースでした。コーマス・クレメンツ(彼はノイックと同じニューカレドニアに住んでいて、僕と同じようにフォイルもしている程、技術力が高い選手です)、タイ・ジャドソン(昨年のディスタンスレースでは3位に入ったトップレベルの選手です)、イヴァン(僕と同い年の友達でスペインのジュニアの中ではトップの選手です)との4人になりました。この中でスタートは1番速い自信があったので、問題はその後、特にコーマスなどはターンの時の小技のレベルが高いので、そこで抜かされたりしないように集中しました。結果、敗者復活戦は1位で通過することが出来ました。

そして準決勝。準々決勝が1番厳しいところです。みんな決勝に残るために全力で挑みます。さらにそれまでの予選を全て勝ち進んできた選手たちが出るので、みんな強い人ばかりです。それは当たり前のことですが、いざスタート地点に立つと、緊張感が高まります。相手はレオナルド、コーマス、そしてスプリントが大の得意分野であるクリスチャン・アンダーソンでした。強者揃いでしたが、不安にはならず今まで練習したことをそのまますればいいと冷静に考え、挑みました。スタートを綺麗に決め、半挺進リードで先頭にたてました。それでも最後までスピードは落とさず、ずっと先頭を譲りませんでした。さすがはコーマス、自分の技術を駆使して、僕の後ろにピッタリついてドラフティングし、最後まで2位を譲らず準決勝は僕とコーマスが決勝への切符を勝ち取りました。レオナルドはスタートはとても速いのですが、コーマスみたいに誰かの後ろについてそのポジションをキープする、という技術が上手ではないので後半落ちてしまい、クリスチャンは新しいメーカーのボードと相性が合わず今回は不調でした。もう一方の準決勝では、予想通りスプリントの世界王者コナーと、漕ぎのパワフルさでは誰にも負けないノイックが残り、決勝は僕、コーマス、コナー、ノイックの4人に決まりました。

去年のワールドツアーでは、中々スプリントで決勝まで行くことも出来ず、悔しい思いをたくさんしてきましたが、昨年12月のスペインに続き今回も決勝に残ることが出来ました。あとはコナーやノイックにどこまでつめられるか、それだけを考えて挑みました。

結果は既にお伝えした通り3位でコナーとノイックにはまだまだスプリントの総合力ではまだ敵わない事を実感しましたが、今までと比べ確実に彼らのレベルに近づいていることを感じました。これまでは体が一番小さくてパワーがない僕にとってスプリントは圧倒的に不利でしたが、今は得意な分野になりつつあります。今回もなぜ、僕が海外の強者達を相手に勝ち進めたか、それは全部お父さんと一緒にやってきた精度の高い漕ぎの練習の成果だと思います。最後の決勝を見てもらうとわかると思うのですが、昨年の12月のAPPアリカンテと比べると、王者コナーとの差が確実に縮まっているのが分かります。結果に満足することはありませんが、スピードだけでなく怪我をし難い精度の高い漕ぎには満足しています。「焦らず研究と工夫、そして努力を続けながら、身体の成長に合わせて自然にパワーがついてくる。」とお父さんはいつも言っています。ノイックやコナーを倒せる日がいつか来ると僕も思います。その日まで引き続き練習を頑張ります。

ワールドツアー初戦を終え帰国して、5月7日に17歳の誕生日を迎えました。今回16歳最後のレースでしっかりと表彰台にのぼれて良かったです。とても思い出になるバースディケーキに感動でした。初戦3位からのスタートでまた新しい一年が始まりました。今年1年、後援会の皆さんの支えと、スポンサーの方々の支え、そしてお父さん、家族。沢山の人達の支えのお陰で今年も海外へ挑戦することが出来ます。感謝の気持ちを忘れずに、去年の自分を越えて、ライバルたちも越えられるように頑張っていきます。皆さん、今シーズンも応援よろしくお願いします。

 

keep paddling.

荒木珠里
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